この丸メガネはミュージシャンなの?

音楽ブログを早々に諦め、ゆるめのサブカルブログへ男は舵をきった

初めてのギターは、キャンディーアップルレッドのストラトキャスターでした。

買おう。

とりあえず、ギターを買うことは決まった。

初めてのギターはfenderでした。

いい。
とてもいい。

バージンを最愛の人に捧げたような、胸を張れる響きがとてもいい。
ジャパンがつこうがなんだろうが、フェンダーフェンダーだ。
天国にいるレオ・フェンダーさんが微笑んでいる気がした。

フェンダーさんの顔は知らないが、とにかく微笑んでいた。

クラレンス・レオニダス・フェンダー
(Clarence Leonidas Fender, 1909年8月10日 - 1991年3月21日)
フェンダー・ミュージカル・インストゥルメンツ株式会社の創業者。
テレキャスストラトの名機を開発したくせにギターを弾けないことでも知られる。
そのギター愛のなさゆえか(偏見)、従来のギターでは考えられないボルトオンネックなど画期的な工法を編み出し、工場で効率的に大量生産可能なエレキギターを作り上げた。
フェンダー製品の持つ、そんな工業製品に近いドライな雰囲気は超絶クールだと思うんだな。ぼかぁ。

Smells like Cyu-2 spirit

さて、それでは何を選ぼうか。
「どれを選ぶのが正解なんだい??」
おれは隣に立つ友人のギタリスト・シドにたずねた。

「んー、テレキャスは癖が強いから、ストラト選ぶのが無難かな。あ、そのジャガーってやつはカート・コバーンが使ってたやつだぞ」

いい。
なんと耳に心地よい名詞ばかりなんだ。
テレキャスストラト、そしてコバーン。
とてもいい。

カート・コバーンという思わぬビッグネームの登場に、おれの中2魂(Smells like Cyu-2 spirit)が歓喜に震えた。

「決めた。ジャガーにするわ」とおれ。
ジャガーだと69,000円すね」と店員。
「やっぱ今のなしで」とおれ

そう、おれの軍資金は3万円。
おれの計算によれば、ジャガーを買うには39,000円足らない。

てゆーか、よく見たら。
よく見たら3万で買えるのないやん。
ざざっと見渡す限り、最安値でも3万数千円の額がついている。
「てゆーか3万で買えるのなくないっすか?」
おれは心の声をそのまま肉声にした。

「たしかに」と店員。
「おいこら」とおれ。
「いけると思ったんですけどね」と店員。
「おいこら」
「あれ、そのストラト、アウトレット特価ってなってますよ」とシド。
「あ、ほんとだ」と店員。
「ほんとだじゃねえよ」とおれ。
「いくら?」とおれ。
「ニーナナだな」とシド。
「買います」とおれ。
「あざまーす」と店員。


なんのための店員だったかわからないが、とりあえずレジだけはちゃんと打ってくれた。

そしておれは美しいキャンディーアップルレッドのフェンダー(ジャパン)のストラトキャスター(アウトレット特価)を手に入れた。


ペラッペラのナイロンのバッグ(フェンダーのロゴ付き。どんだけチープでもそれだけで勝ち)を背負って外に出ると、おれの中に万能感・無敵感がみなぎっているのを感じた。
さっきまで猫背のネルシャツ野郎だったのが、フェンダーのギターを背負うだけで、猫背でネルシャツのグランジロッカーに早変わりだ。

「おれはカートだ」
そう、おれは呟いた。アッパーになりすぎた脳が、危ない領域に踏み込んでいた。

そんなおれのアッパー脳に、シドがさらに油を注いでくれた。

「こんど、一緒にスタジオはいろうぜ」

ういいいいいいっす!!!!