この丸メガネはミュージシャンなの?

音楽ブログを早々に諦め、ゆるめのサブカルブログへ男は舵をきった

休日にDJするとシティボーイになれるとPOPEYEで読んだのですが

お題「気分転換」

 

ポパイとシティボーイ

シティボーイは本当に実在するのでしょうか?

驚くことに、おれは自らをDJと名乗り始めている。

土日の休みはもっぱらDTM(PCで音楽を作ること)にハマっている。
最近、人に休みの過ごし方を聞かれた時「日曜DJです」と言い出した。

厳密に言えば、おれがおこなっているのは、ディスクジョッキーではなくソングライティング(作曲)とラップ歌唱なので、「日曜トラックメイカー」か「日曜DTMer」か「日曜ラッパー」なのだが、呼び名にすでに市民権を得ている上に、なんか格好いいという理由でDJと名乗ることにした。

市民権をすでに得ているという点では「ラッパー」もDJに負けていないのだが、なんでか、カタカナでラッパーって書くと、すごくバカっぽいエフェクトが加わるから名乗りたくない。
そこへさらに「日曜」までついてしまうと、もう始末におえない。

日曜ラッパーの肩書きがつくくらいなら「無趣味です。では」と潔く宣言する方をおれは選ぶ。
論外。そう、日曜ラッパーは論外だ。

で、トラックメイカーとDTMerは、単語自体が一般人にまで根付いていないので、おそらく言ったとて伝わらないので却下だ。

てか伝わらずにスルーされるならまだ良いが、聞き返されると今度は説明が面倒くさい。

で、面倒くさい上に説明したとて、良い展開が待っているわけがない。

ぐだぐだ説明するほどにキャバ嬢の目が「いやそんな興味ないし」みたいに冷たくなるのが容易に想像がつく。
よって消去法で、おれは「日曜DJ」と名乗ることにしたのだ。

てか今、上の文章を書いていて思ったが、おれはよく人と話しながら先読みをする癖がある。あと知らぬ間にキャバクラに入っていた。

先読みした先に面倒な作業が待っていると気づくと、それを避けるために虚偽の報告をする。

例えば、雑談で兄弟の話とかになって、その話をさっさと切り上げたいために「おれ一人っこなんで。では」とか、
海外行ったことあります?と聞かれて話をさっさと切り上げたくて「本州から出たことないので。では」とか、そんな感じだ。

この悪意ない嘘は、嘘をつくことによるメリットがないだけに、ほぼ相手は騙される。
かくして、概ね虚偽情報で塗り固められた、おれとは別人間と言っていいほど実態と異なった人間像ができあがるのだ。

おれはPOPEYE的なシティボーイになりたかったのさ

まあなんにせよ、趣味がある休日はいい。

ただ、趣味ができて楽しいといえば楽しいが、誤算もある。
おれが当初考えていた音楽のある休日のイメージとのギャップだ。

おれが思い描いていた休日の過ごし方はこんな感じだ。

ちょっとだけ開けた窓から入ってくる季節の風。
ちょっとだけ贅沢して買ったコーヒー豆を挽いたこだわりのコーヒー。
ネコの頭をなでて観葉植物に水をあげたら、macbookを開きお気に入りのビートを紡いでいく。
昼をまわった頃、玄関が開きフルーツとワインを紙袋に入れた彼女がやってきた。
木漏れ日の中、メロウな音に肩を揺らすボクは休日DJ。
ネコを胸に抱きながら目をつぶる幸せそうな彼女。

みたいなやつだ。

POPEYEのシティボーイ特集かなんかで見たことがある気がする、いけ好かない連中のいけ好かないアーバンライフスタイル。

ずばりおれは、いけ好かない生活を送りたかった。
メロウでチルな音を、空気に薄く色をつけるように流したかった。
が、現実に流れる音は、その穏やかなイメージとはあまりにかけ離れていた。


いや、というか、今書きながら気づいたが、そもそも音うんぬんの前に、環境が全然違っている。
まずおれには、フルーツとワインを紙袋に入れて、玄関に現れる彼女がいない。
持ってくるのが牛カルビ弁当だろうがセブンの袋だろうが、とにかく彼女がいない
現れるのは、聖書を持ったおばちゃんNHKの集金ばかりだ。

観葉植物なんてもちろんこの部屋にはない。本来置けるはずのスペースには、amazonの段ボールがキャンプファイヤーできるほどに溜まっている。
植物はおろか冷蔵庫には野菜さえ入っていない。

そして驚くことに、ネコも飼っていない。
おれが重度の猫アレルギーだからだ。

想像上のおれと現実のおれとで、共通点はもはや休日に音楽を作るということくらいだ。
ここまで環境が違っていると、確実にゴールが変わる。

シティボーイへの呪詛

ゴールが変わるとは、要するに生み出される音楽の形が変わるということだ。

おれの好きなマンガ、BLUE GIANTにもある通り、感情は出す音へと直結して影響を与える。
真のミュージシャンはそうなのだ。
おれの出す音は妙に荒んでいて、敵意と怯えを剥き出しにした、凶暴な野良猫のような不穏な響きだ。

今わかった。
おれの音はシティボーイへの呪詛だ。