この丸メガネはミュージシャンなの?

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例のモニターヘッドホン【MDR-CD900ST】はミックス向きじゃありませんよ

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DTMerは嘘をつかない。たまに誤ちをおかすだけだ。

DTM(パソコンで音楽を作ること)を初めて、早2年くらいか。
MIDIってなんですか? WAVとは? みたいなところから始まって、今はそれなりの知識でそれなりのミックス(編曲)ができるようにはなってきた。

そもそも何の効果があるのか謎だったコンプ とかEQといった定番機材もまあまあ使いこなせるようになってきた。

それもこれも先人DTMerたちが惜しげもなくネットに公開している様々なTips、金言のおかげだ。

「コンプ とEQは音を決める最重要ポイント」
何度も見たこの言葉も当初は「またかよ。なに言ってんだこのメガネ。メガネか知らんけど」って無駄にとがってうがって読んでた感じだったが、今はその意味がしかとわかる。たしかに最重要だ。

まあそんな感じでGoogleの検索バーの入力方法さえ知っていれば独学でなんとかなる時代なのだが、無知ゆえに先人の情報を盲目的に信じて騙されることも多々ある。

で、おれがこの2年で「これはやられた」と思った情報が、いまだにモニターヘッドホンとして王者の座に君臨し続けるSONY MDR-CD900ST】の件だ。

どこのスタジオにも置いてあり、有名アーティスト達がしょっちゅうレコーディングシーンで着けており、誰もが一度は目にしたことのある赤のラインが特徴的ソニー超定番ヘッドホンだ。

この「裸の音を聞かせる」と言われるちょっぴりエッチな高性能モニターヘッドホンの王者の座は令和に入った今なお健在なのではあるが、困ったことにこいつの使い方が誤った形で広まっている。
かなり熟練のDTMerたちでさえ誤った利用法をしている。

SONY MDR-CD900STの写真

MDR-CD900ST

その間違った使い方とは、MDR-CD900STをミックスの際に使うということだ。
ミックスとはボーカル、ギター、ベースなど、いくつかに分かれたトラックをひとつにまとめる作業をさす。
ミックスというとかっこいいが、要するにそれぞれの音をあるべき位置にあるべき音量でバランスよく配置する、そういう作業だ。

で、その一番良いバランスを実現するには、当然だがしっかりとそれぞれの音をクリアに聴き取れる環境でやらないといけない。

DTMを始めてから知ったのは、市販のリスニング用ヘッドホンは、値段の高低に関わらず相当な色付けがされているということだ。

初めて作った曲をミックスしたとき、おれは音楽観賞用に普段から使っているヘッドホンで作業した。
こいつは低音がぶりぶりに効いているモデルだった。
そいつであーだこーだバランスを整えて、よし完璧やとなって書き出した曲を、コンポのスピーカーで再生したときの衝撃は忘れない。

もうめちゃくちゃだった。
まずヘッドホンでちょうどいいと思っていたベース音が蚊の鳴き声くらい消えている。
おまけにヘッドホンのときモコモコしてて良い感じにごまかされていたエレキギター音が、そのカスなテクニックを余すことなく伝えるかのようにボーカルを遥かに凌ぐ音量で鳴り響いていた。

おれはこの瞬間、モニターヘッドホンの重要さにようやく気づいた。
すべての音を原音のバランスのままにクリアに聴き取れないと、どのスピーカーで再生しても成り立つバランスの良いミックスはできないのだ。
リスニング用ヘッドホンでのミックスは、乱視になれるメガネをつけて米粒に写経するようなもんだ。
今わかった。おれは例え下手だ。

それはともかくその夜おれはモニターヘッドホンをネットで探し始めた。

スタジオの定番・SONY MDR-CD900ST神話と疑念

そして知るMDR-CD900STへの大絶賛の声

裸の音、すべてのモニターヘッドホンの基本となる音、原音を忠実に再現する無二の音。とにかくまずはこれを買え的なレビューがサウンドハウスの商品ページにこれでもかと並んでいた。

他のヘッドホンのレビューを見ても「MDR-CD900STと比べるとこのヘッドホンは…」などと、定番が故の比較対象のデフォルトとなる扱いを受けておりその信頼性は増すばかりだった。
おれに残された選択肢はひとつ。
おれはその日のうちにMDR-CD900STをポチった。

 

MDR900の箱

さすが業務用な箱

で、いかにもプロといった佇まいの味も素っ気も無い箱に入ったMDR-CD900STが我が家に届いた。
思った以上に耳のとこのクッションが少なく心細い装着感だった。
しかし音楽を再生してみておれは驚いた。

今まで使っていたヘッドホンが音に加えていた演出がすべて剥ぎ取られて聴こえた。
こいつこんな鳴り方してたんかい。こいつこんなミスしまっくてたんかい。
もう本当に丸裸といっていいクリアな音だった。ただ自信を思いっきり失うくらいとにかくペラッペラな音でもある。これが裸の音か。
おれはモニターヘッドホンに感激しつつ同時に自身の楽曲のしょぼさにショックを覚えつつミックスをやり直した。

で、MDR-CD900STでミックスしてこの前同様コンポでかけてみて、おれは驚いた。
「あれ、ベースでかすぎねえか?」と。

たしかに先日よりもバランスは良くなっている−−気はする。
しかし低音が思った以上にモコモコしていて、本当にこれでいいのかまったく自信の持てない出来だった。
でもっかいMDR-CD900STで聴いてみる。
−−うん、ちょうどいい。
で、スピーカーで違和感あったならと今度はイヤホンを引っ張りだして聴いてみる。
−−あれ、ベースの主張がすごすぎる。

おれの中で徐々に疑念が湧いてきた。
これ、実はミックス向きじゃないんじゃね? と。

やっぱりMDR-CD900STはミックス向きじゃない

で、再びGoogleで情報収集を始めると、幾多のDTMerたちの絶賛の声に混ざってこの疑念を証明するような記事が目に止まり出した。
そしてMDR-CD900STはミックスに不向き派は音楽制作に携わっている人間、MDR-CD900ST信奉者はアマチュアDTMerという勢力構図がぼんやり見え始めてきた。

疑念が確信に高まってきたおれは、再度DTMer御用達の店・サウンドハウスへ突っ走りオーディオテクニカが出しているATH-M50を購入してみた。

こいつは日本生まれでありながら、アメリカを始め海外でモニターヘッドホンとして確固たる地位を築いている隠れ王者だ。
レンジャーズでセットアッパーをしていた頃の上原浩治に匹敵する、日本の評価以上にアメリカでの評価がバカ高いという稀有な存在だ。

聴いた瞬間、MDR-CD900STで感じた違和感がすべて解消した。
ミックスってこういうヘッドホンでやるんだよ、と。

ミックス用なら、オーテクATH-M50にしときなさい

これはATH-M50のほうがMDR-CD900STより優れているという意味ではない。
用途が違うのだ。

結論からいうと、MDR-CD900STはボーカル録音時のモニター用としてはめちゃくちゃ優秀な役割を果たすが、間違いなくミックス向きではないということだ。
とにかく低音が利かず平坦な音で鳴ってくれるので、伴奏が捉えやすく歌いやすい
全然色付けがされずクリアなので、歌や出音の粗探しも簡単にできる
スタジオに置いてある理由は恐らくそれだ。

だがミックスで使うとなると話は変わる。
全体のバランスが整える目的のこの作業では、この低音の弱さは致命的だ。
そして低域のボリュームを間違えることは、中域〜高域すべてを間違えることへ繋がる。

サウンドハウスのレビューで他のヘッドホンのレビューで、
MDR-CD900STと比べて低音が出過ぎなため、このヘッドホンでミックスすると低域が弱くなりすぎると感じました」
みたいなことを言っているメガネ共がいるがこれはまったく逆だ。
MDR-CD900ST低音が出なさすぎなのだ。

とにかくMDR-CD900STをミックスに使っちゃダメだ。(粗探しには最高だ)
MDR-CD900STを盲目的に信じるDTMer、そして2年前のおれに言いたいのはそれだけだ。

最後に耳より情報いっちゃうと、サウンドハウスのオリジナルブランドCLASSIC PROのモニターヘッドホンCPH7000は、マジでその値段に対して尋常じゃない性能を誇ります。
開発スタッフも予想以上のクオリティのヘッドホンができちゃって焦ったんじゃないかってくらい常識を覆すコスパです。
なんと3000円台の破格で買えるので、もしお金と私を信じる心があったら試してみてくださいまし。

ではでは。

 

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