今週のお題「最近ゲットしたもの」

クラークスのワラビーブーツを買った。
もう何足目だろうか。
またしてもクラークスのワラビーブーツを買ってしまった。
なんでこの靴にこんなに惹かれるのかわからない。
しかし気づくと年中履いている。
かつてトリッカーズのカントリーブーツ愛を熱く語っておいて何を言わんやという話だが、書き始めてしまったからにはしょうがない。
今日はトリッカーズを脳から消し去り、ワラビーのことだけ考えて書こう。
ちなみに余談だが、大正ロマンを代表する画家・竹久夢二の名言で
「私は浮気をしたことがない。なぜなら常に目の前にいる女性のことしか考えていないからだ」的なのがあった気がする。
瞬間を切り取る画家ならではのアクロバティックな炎上発言だ。時代が大正で助かった男である。
クラークス(Clarks)とはどんなブランド?
ワラビーを語る前に、まずはクラークスというブランドの説明をしておこう。
【クラークスとは】
1825年にイギリスで創業されたシューズブランド。
履き心地抜群の羊毛スリッパを製造することから始まり、その後、革靴製造に事業を拡大。
ワラビーを始め、デザートブーツ、デザートトレック、ナタリーといった、唯一無二のオリジナリティ溢れる傑作シューズを世に送る。
また欧州の児童靴市場でのシェアは長年高く、確かなクオリティで評価の高いブランドでもある。
今回紹介するワラビーは、クラークスの代表作のひとつで、モカシンの構造を採用した袋縫い形状のシューズである。
ワラビーという名称はまさに例のカンガルーっぽい動物からとったもので、足を包み込むこの靴の特徴を、有袋類の動物になぞらえたものだ。

私がワラビーに出会うまで
私がクラークスを知ったのは、いつもながら友人Yからだった。
Yがクラークスの名作・デザートブーツをパコパコと履いているのを見て興味を持ったのだ。
私のファッション史は、不本意ながら大体この男を源流とする。
見るからに上質なのにフニャフニャと気持ちよさそうなスエードのアッパー、天然ゴムによるクッション性の塊のようなクレープソール、そしてミニマルながら存在感抜群の芸術的フォルム。
「うおい、それはなんて靴なんだ?」と即言わせるだけの魅力にあふれていた。
おまけにYの説明により、UKロックを始めとした音楽カルチャーと密接な関係のあるブランドだということまでわかり、がぜん購買欲がわいた。
よし私はクラークスを買おう。
しかしデザートブーツはすでにYが履いている。影響を受けつつも、頑なにYとアイテムが被りたくない私の選択肢からデザートブーツが消えた。
「早く飽きてタダでくれねえかな」と舌打ちしながら消した。
しかたない、デザートトレックでいこう。
と思った矢先に、おすまし顔のYがデザートトレックの足元で登場。デザートトレックが消えた。
そんな消去法で、私はワラビーを選ぶことになった。

私がワラビーを好きな理由
そして私はワラビーを購入した。選んだカラーは黒だ。
キュートなフォルムと、クールでシックな黒のスエードが絶妙なギャップを生んで素敵だと思ったのだ。
消去法で残ったワラビーだったが、購入するやいなやすぐに虜になった。
まずワラビーという語感がいい。繰り返し呼びたくなる中毒性がある。
やあワラビー。へいワラビー。
ワラビーと呼ばれるやつに悪人はいない。絶対温和な性格で星を見るのが好きなやつだ。
もちろん気に入った点は名前ではない。
それだけではないのだが、ここがクラークスの奥深いところで、好きなポイントのどれもに、長所と短所が同居しているのだ。
このアンビバレントな魅力が、他の靴では味わえない偏執的な愛を生みだし、もうクラークスしか履けないと人を狂わせていくのだ。
例えばアイデンティティのクレープソール
これぞクラークスのアイデンティティといっていいクレープソール。
天然の生ゴムを幾重にも重ねて作られる弾力性に富んだこのソールは、ぐにょんぐにょんとした独特の履き心地をもたらしてくれるが、実はなかなかの問題児だ。
まず見た目に反してそこそこ重い。中までぎっしりの生ゴムの重量は、天然素材を舐めんじゃねえよという気概を思い知らせてくれる。
で、そんなタフな重量のわりに熱からの影響をめちゃくちゃ受ける。
冬はゴムから鉄へのケミストリーが起きたんじゃないかというくらいカチコチになるし、真夏のアスファルトの上では普通に溶ける。
「あ、溶けてら」と足底に感じるベタつき具合は、クラークスユーザーだけが味わえる新鮮な感覚だ。
そしてやはり摩耗に弱い。耐久性が高く作られているとはいえ、天然の生ゴムにアスファルトは相性が悪すぎる。大根を履いて大根おろしの上を歩くかのように、気づけばソールはすり減っていく。
いちおう、靴底にすり減り防止のプロテクターを貼る儀式を毎度行うのだが、気休めにすぎない。先述の通り、靴底が柔らかい上に温度で変化するので、プロテクターはすぐポロリといってしまう。
まあこれは「これから大事に履くよワラビーしゃん」という、忠愛を示す意味合いが強いので、ワラビーがその気持ちに気づいてくれたら僕はそれでいいのだ。


例えば独特のデザイン
今でこそクラシックとして受け入れられているクラークスの靴だが、発売当初はそのデザインの奇抜さで賛否両論を巻き起こしたこともあるようだ。
たしかに「普通なようでちょっと変」という雰囲気はどのモデルにも漂っている。
ワラビーも、甲の部分をU字型に縫い合わせたモカシン風のポッテリとしたアッパーと、それに対抗するようポッテリとしたクレープソールで、可愛いんだか野暮なんだかわからない独特のボリューム感がある。
またこれは履きだしてから気づいたのだが、男性靴にしては珍しく、アッパーの横幅よりソールの横幅が完全に狭い作りになっている。
これ、スニーカーやコバのある靴に慣れてるとまじで感覚がバグるんですよ。足裏だと思ってるサイド部分が、実際は何もないんでね。
最初買った頃は、何も無い平地で足を踏み外すという奇行を繰り返しましたわ。

例えばクラークスならではのサイズ感
で、そんな独特のデザインだからか、クラークスはサイズ感が独特だ。アディダスやナイキのスニーカーの感覚で選んだら、絶対に最初しくじるといっていい。
例えば私はナイキやアディダスだと26センチがジャストなのだが、クラークスだと24.5を買う。
作りの差もでかいが、素材の影響も負けずにでかいように思う。
クラークスのスエードは履いてくうちにめちゃくちゃ伸びるのだ。なので最初は「ちょっときついかな」くらいのサイズ感を買うとよい。履いてくうちに伸びるべきところは伸び、いずれオーダーメイドで作られたような履き心地になる。これは経験談だ。ちなみにこの傾向はデザートブーツが一番顕著だと思う。
例えばいずれ別れのくる製法
以前紹介したトリッカーズのブーツは、堅牢なアッパーと靴底の取り換えがきくグッドイヤーウェルト製法で、修理をしていけば一生履ける靴だった。
しかしワラビーは製法上、オールソールのような修理ができない。これはエイジング好きの私にとって大きな痛手だった。
だがいずれくる別れを胸に秘めた関係は、いつだって悲しく美しい。
日々すり減るソールを気にし、油断すればシミになるアッパーを愛で、そして明日も私はワラビーで歩いていくのだ。
ではでは。