
A.P.C.デニムへの偏愛
数年前、まだこのブログがよちよち歩きだった頃、大好きなデニムについてこんな記事をアップした。
いまだにGoogle検索から多くのアクセスをもらっており、もともとDTM(パソコンを使った音楽制作のこと)がメインテーマだったこのブログの方向性をブレブレにさせた革命児である。
で、この時載せているジーンズがA.P.C.(アーペーセー)のプチスタンダードというモデルである。
たぶん当時も書いているが、私はA.P.C.のデニムが好きである。5年経過した今でもその気持ちは変わっていない。
パッと見、なんの変哲もないこのジーンズに、なぜこんなにも愛情を注いでしまうのか。
なぜ同じようにA.P.C.を偏愛するマニアがたくさんいるのか。
語りたい夜なので語ります。

評判高きA.P.C.デニムの特徴
まずはブランドの説明をしておこう。
【A.P.C.(アーペーセー)とは】
1987年にデザイナー、ジャン・トゥイトゥによって設立されたフランスのファッションブランド。
ブランド名は『製作と創造のアトリエ(Atelier de Production et de Creation)』という意味がある。
創設当初から一貫してベーシックなデザインを基本としており、その徹底されたミニマルさゆえ、逆に着る人の個性を際立たせる服として知られる。
「こっちは最上級のベーシックを提供するから、個性は服の中身でがんばって出してね」
そんなポリシーの込められた服と私は認識している。
で、そのA.P.C.のブランド哲学をより色濃く反映したアイテムが、ジーンズやGジャンなどのデニム系のラインである。
ちなみにA.P.C.デニムのスタートは、旅行中にお気にのジーンズを失くしたジャンが、どこの店いっても良いジーンズねえなと思って、じゃあ自分で作ろうとなったことがきっかけだとか。
そんなジャンが自身の理想を具現化したA.P.C.のジーンズの特徴がこちらだ。
- 超ミニマルなデザイン
バックポケットに飾り刺繍なし、腰にパッチなし、縫い糸は単色と、アイコニックな装飾を省いたデザインが特徴的。多くのモデルがユニセックスでの着用を前提として作られている。 - 美しいシルエット
時代に左右されない細身のフィットがメイン。特に経年変化が起こる前のリジッドデニム期のクリーンさは他ブランドのデニムとは一線を画すレベルで、カジュアルだけでなくフォーマルまでバシッと決まる上品さがある。 - オリジナルのデニム素材を使用
旧織機で編んだ日本製のオリジナルデニム生地を使用しており、耐久性・風合い共に抜群。 - 経年変化
オリジナル生地の特性とシワのつきやすいタイトなシルエットのため、履き込むほどに尋常じゃない経年変化をする。

A.P.C.デニムの最大の魅力はその色落ち
で、そのA.P.C.のデニムの何がそんなにすごいのか?
それは、経年変化による極上の色落ち。
これに尽きる。
先ほど挙げた特徴それぞれが強力な魅力ではあるのだが、中でも一つ挙げろと言われたら、経年変化による凶暴といってもいい色落ち、アタリのつき方を私は推したい。
多くのデニムフリークが愛用するのも、この唯一無二のエイジングを期待してかと思う。
脱個性の極みといっていいミニマルデザインが特徴のA.P.C.の服だが、ことジーンズに関しては少々事情が異なる。
たしかに生まれたての頃は、個性の排除されたプレーンでクリーンなお坊ちゃんデニムなのだが、成長するに従い個性しかないワイルドなロック野郎に変貌を遂げていくのだ。
しかしいくらワイルドな風貌になろうとも、出自からなる育ちの良さは滲み出るものだ。
「ジャケットに合わせられるデニム」の代表格ともされる美しいシルエットゆえに、粗にして野だが卑ではないという、ワイルドにしてエレガントな魅力を放つ稀有なジーンズとなっている。
ともすれば「ダサい」のゾーンにいきかねない過激な色落ちや、洗濯しまくりによる育成失敗も、この美シルエットゆえに魅力として成立させてしまう凄まじい完成度だ。

デニム生地は日本が誇るカイハラ社製
ちなみにこの強烈な色落ちを可能としているA.P.C.のオリジナル生地だが、なんと日本のカイハラ社で製造されている。
これは以前に大絶賛したユニクロのジーンズと同じだ。
ただニュアンスとしては「A.P.C.はユニクロと同じメーカーのデニム生地を使っている」のではなく
「ユニクロはA.P.C.と同じメーカーのデニム生地を使っている」だ。
ユニクロがバグっているだけだ。
で、このA.P.C.のオリジナル生地、風合い・履き心地はユニクロのデニムと大きく異なる。
フランスパンとも形容される、外はパリッと中はふわふわの肌触りは、A.P.C.以外で味わえない履き心地だ。
購入直後のバッキバキに糊がついて自立できるくらい硬い状態から、このフランスパン状態になる過程でめちゃくちゃ愛着が湧いてしまうのは、人間の心理上どうしようもない。抗えないツンデレの魅力だ。
特に膝の折り曲げ部分は馴染む前後のギャップが顕著で、あれほど曲がるのを拒んでいたジーンズが、ある日を境に逆にアシストするかのごとく脚に寄り添ってくれるようになるのだ。
不思議に思い膝裏を見ると、そこには二人が心を合わせるために必要だった回数のヒゲができている。
僕は無言で抱きしめた。
そんなイカれたエピソードはこのジーンズでしか聞いたことがない。
いや今の今まで聞いたことがない。筆がすべった。

A.P.C.ジーンズのシルエット比較
名称がフィット感を表しておらず、モデルごとの差分がわかりづらいA.P.C.ジーンズ。
なので代表的な3モデルの主な違いを記してみよう。ちなみにどれもユニセックスだ。
- NEW STANDARD(ニュースタンダード)
3モデルの中で一番ベーシックなストレートシルエットのジーンズ。ちょうど良い深さの股上、ストンと落ちるストレートレッグでカジュアルからフォーマルまで何でもござれの汎用性の高いモデル。 - PETIT STANDARD(プチスタンダード)
他ブランドで言うスリムフィットモデル。
浅い股上に、ゆるめにテーパード(足首にかけて徐々に細くなるシルエット)したタイトカットが特徴的。スキニーというほど細すぎずの絶妙なバランスがさすがA.P.C.である。 - PETIT NEW STANDARD(プチニュースタンダード)
ニュースタンダードとプチスタンダードの良いとこ取りをしたデザイン。一番着用率が高い気がする。
ちょうど良い深さの股上と太もも周りから、足首にかけてぎゅっとテーパードした美シルエットが特徴的。
また最近、原点回帰ともいえるルーズフィットの「STANDARD」がラインナップに加わり、時代に合ったシルエットの展開をしている。

語りたい欲がほぼ満たされたため、以上でA.P.C.デニムの語りを終了しよう。
ジーンズを履くだけで、ただの座るや立つ、歩くといった行為に楽しみが生まれるので、A.P.C.じゃなくともデニムを一から育ててみるのは超おすすめです。
今日はおやすみなさい。
ではでは。