- 最高な色落ちをした極上ジーンズを発見してしまった
- 謎デニムの正体はユニクロのレギュラーフィットジーンズだった
- ユニクロのジーンズが評判の高い理由
- まさに神デニム。おすすめはストレッチセルビッジスリムフィットジーンズ
- 改めてユニクロって文化だなあ
- 最後にユニクロジーンズを色落ちさせた方法
最高な色落ちをした極上ジーンズを発見してしまった
お盆休みに実家へ帰省するのは毎年のことだ。
すぐさまやることがなくなるのも毎年のことだ。
そして今年も即座にやることがなくなり、おれはクローゼットを漁った。
過去の夏フェスのTシャツや何年も着ていないジャケットやコート、普段記憶から消えているその服たちを見ると、忘れていた様々な思い出が色鮮やかに甦る。
そう、服とはその時代の自分を現す自己表現の手段であり、そしてその時に自分がもっとも間近で見ていた景色そのものでもあるのだ。
と、ヒグラシの声を聞きながら詩人化していた汗だくメガネの手元に、一着のデニムジーンズが現れた。
それがこれだ。
えぐい掘り出し物がきた! とおれは驚き色めきだった。
適度に濃紺を残しながらガッツリとアタリとヒゲ、パッカリングがついた、激渋ヴィンテージデニムさながらの迫力ある佇まい。
左足に顕著なおれ特有のヒゲの形、コインポケットに残るジッポーの跡、小さく破けたひざの穴。ヴィンテージ加工ではなく、間違いなく生活の中でリジットから育成したジーンズである。
とにかく、めちゃくちゃかっこいいではないか。
やーしかしこのデニム、存在が記憶から思いっきり吹っ飛んでいる。
様々な思い出が色鮮やかに甦えってないやん、と脳内のおれが冷たく言うのを聞き流しながらおれは考えていた。
このジーンズ、一体どこのブランドだろうか。
近年は偏執的にKUROとA.P.C.しか履いていないが、これらに出会う前の若きおれは相当なデニム難民となっており、理想のジーンズ・理想の色落ちを求めて様々なブランドに手を伸ばしてきた。
今回出てきたデニムはその難民中に買った可能性が高い。
当時履いていたのはリーバイス、ラングラー、いやタグがないからGAP、いやこの重厚感はウエアハウス、フルカウント、ドゥニームあたりか……なんてコンマ1秒で予測しながらボタンを見ておれは驚愕した。
謎デニムの正体はユニクロのレギュラーフィットジーンズだった
そこにはUNIQLO JEANSと刻まれていた。
キングオブ・ファストファッション、ユニクロ。
UNIQUE CLOTHING、略してUNIQLO。
そう、なんとこいつはユニクロのジーンズだった。
しかも愚直なまでにベタなメンズのレギュラーフィットだ。つまりは日本で最も大量生産されたであろう大人気の定番ジーンズである。
冒頭で自己表現を語った男の私物とは思えない。
とはいえ、こいつのかっこよさは本物だ。
元は量産型モデルだとしても、今やこいつはエイジングを経たオンリーワンのデニムとして我ここに在りけりと主張している。
「ユニクロのデニムはきれいに育たない」とか、
「やっぱり本物のヴィンテージとは風格が違う、現物見ると違いがわかるよね」とか言っている妄想内のデニムマニア共の顔面へ「うるせえ、この節穴野郎が」とこすりつけたい素晴らしい完成度だ。
半分本気で、これより色落ちの仕上がったユニクロのジーンズは見たことない気がする。
ユニクロのジーンズが評判の高い理由
やるなユニクロ、すごいぞユニクロ状態になったテンションのまま、ユニクロデニムのここがすごいというところを語っていこう。
おれはユニクロのデニムをとてもリスペクトしているのだ。
日本でのジーンズの歴史においてユニクロは偉大なる革命児である。
この国だけで言えば、リーバイスやリーより大きな影響を与えてきたといっても過言ではない。
ジーンズをリーズナブルに販売したから。ではない。
超上質のジーンズをリーズナブルに販売したからだ。
安いだけのジーンズだったらユニクロ以外でもそこら中に売っている。
しかし日常着としてだけでなく、ジーンズの嗜好品としての側面、歴史を含めたその奥深さにいち早く着目して本腰を入れたからこそ、おれみたいな頭でっかちのデニムフリークメガネも手にとるブランドとなったのだ。
そのこだわりたるや本当にハンパない。
超老舗ファクトリー・カイハラ製のデニム生地
まず有名な話だが、ユニクロのデニム生地は岡山県で130年の歴史を持つ名門デニムファクトリー・カイハラ社製だ。
カイハラの生地はそれこそA.P.C.などのデニムフリークが好む名ブランドも採用しており、まずこの段階で他ファストファッションブランドに圧勝だ。一流ブランドと遜色がない。
セルビッジデニムの大量生産
さらにデニム業界を震撼させた大革命がこれだ。
セルビッジデニムの大量生産の実現である。
セルビッジデニムとはヴィンテージデニムを織る際に使われた、旧型シャトル織機を使ったデニム生地だ。
裾を折り返したときに見える“耳”が特徴で、赤いステッチがよく使われることから“赤耳”なんてキュートな名前で呼ばれている。
今ユニクロのジーンズを持っている方がいたら、裾をちょこっと折り返してみるといい。結構な率で赤いそいつがちょこんと顔を出すはずだ。
正直おれもユニクロでセルビッジデニムを知った口だが、往年のデニムフリークからしたらこれはパラレルワールドに迷い込んだくらいのありえない事変らしい。
なぜならユニクロのセルビッチデニム登場前まで、その赤耳がついているだけでウン万円、ものによっては10万円を超えることもある希少性だったからだ。
赤耳があった時点で、高校生が無造作に履いてスライディングしていいデニムではないのだ。
しかしユニクロという革命児とカイハラという実力者ががっつり手を組み、そのレアなデニムを気軽に履ける世界を作り出してしまったのだ。
99%以上の日本人が赤耳だろうが空耳だろうがどうでもよかろうに、この一見無駄とも思える強烈なこだわりがあったおかげで、ユニクロのデニムは他のファストファッションブランドと百線くらい画した地位を築いた。
残り1%のデニムフリーク達がこぞって「すげえよユニクロ!」と叫んだのだ。
人気の秘密・最強のストレッチデニムの開発
さらにもう一つすごいところは、ユニクロの専売特許である「普段着としての機能性の追求」も欠かさなかったところだ。
エアリズムを始めとして機能性を勝負に持ち出したらユニクロに勝てるやつはいない。
本来タフで丈夫な代わりに履き心地は固くごわついていたデニムに、高機能なストレッチ素材という最強の価値を早々につけ弱点を克服したのだ。
もちろん先のようなデニムへの頑固なこだわりがあるだけに、風合いやエイジングによる味のある色落ちを犠牲にすることなくだ。この両立がすごい。
このストレッチ機能のおかげでスタイリッシュなスキニーパンツが無理なく誰でも履ける時代が到来した。
本来、ファッション感度の高い人々が涼しい顔の裏できゅんきゅん脚を圧迫しながら履いていたスキニーパンツにデイリーウェアとしての市民権をもたらしたのだ。
まさに神デニム。おすすめはストレッチセルビッジスリムフィットジーンズ
ちなみにユニクロのデニムで当たり前のように見る「ストレッチ性のセルビッジデニム」というのは、本来ありえないものである。
セルビッジデニムの織機自体が半世紀以上前のものなので、そもそもストレッチ素材を織れるようにできていない為だ。
しかしさすがはユニクロ、そしてカイハラ社だ。織機の改造という禁じ手まで行って夢のデニムをあっさり実現してしまったのである。
ヴィンテージデニムと同じ織られ方、同じ風合い、もちろん色落ちも同様に味わい深い。なのに履き心地は超令和。神デニム。それがお値段3千円台。
良い意味でいかれまくっている。
なのでデニム選びに迷った時のおすすめを挙げるとしたら、21世紀以降でしか履けないという観点から「ストレッチセルビッジスリムフィットジーンズ」だ。
マイナーチェンジを繰り返しながら常にユニクロデニムの一軍に居座る人気アイテムで、デニム好きはこれかレギュラーフィットの2択で選んでいるイメージが有る。
クラシカルかつ履きやすい素材感と、オールマイティにトップスに合わせやすい細すぎず太すぎずな美シルエットでとにかくフレキシブルに使える逸品だ。
改めてユニクロって文化だなあ
ユニクロのHPを見ると、相変わらず色々とやっているようだ。
近年はLAでジーンズイノベーションセンターなる自社デニムの研究施設を誕生させ、環境負荷から労働負荷まで考えた新世代のジーンズを企画しているらしい。
さすが先へ先へいく企業だ。
ユニクロが動くと、人々の服が変わり、服が変わると街の景色が変わる。
ゴミ捨て中のお母さんのTシャツにバスキアやアンディ・ウォーホルが描かれ、干してある洗濯物はエアリズムだらけになり、そして人々の裾を上げたデニムの裏には赤耳がついた。
そういえば今年はA.P.C.と並ぶブランド・ヘルムートラングの失われた傑作ジーンズの復活までさせていた。
改めてユニクロってすごいなあ。すごいというかもう単なるブランドを超えて日本の文化だなあと薄めの感想を残して今日は締めさせていただきます。
最後にユニクロジーンズを色落ちさせた方法
ちなみに今回のジーンズの色落ち・アタリをつけるコツを少しだけ話すと、手を洗った後にハンカチは出さずにデニムの太もも部分で直接拭くというのを習慣化すればいい。
自然とこう育っていく。
大人になるとできない過激なエイジング手法だ。
じゃあ大人はどうデニムを育てれば良いのかという方法については下記記事にて詳しく書いている。大人になった私の色落ちメソッドの詳細である。
ではでは。おやすみなさい。