この丸メガネはミュージシャンなの?

音楽ブログを早々に諦め、ゆるめのサブカルブログへ男は舵をきった

妙に人気なレトロヘッドホン「アシダ音響ST-90-05」レビュー

アシダ音響ST-90-05

不思議と人気なヘッドホン「ST-90-05」を買ってしまった。

かれこれ一年以上も気になっていたアシダ音響のヘッドホン「ST-90-05」を買った。

初めて存在を知ったとき、まずこいつのルックスにおれの心は射抜かれた。
おじいちゃんの遺品整理で見つけたような、平成を超えて昭和といっていい超絶レトロで無機質なデザインにやられたのだ。

で、なんじゃこりゃと品名を検索してレビューを読んでみると、これがまたどえらい高評価なのだ。
メーカーはアシダ音響という創業80年の超老舗メーカー。おまけに価格はまさかの6000円台。予想以上に安すぎる。

このミステリアスなヘッドホンは一気におれの物欲を刺激した。
しかしヘッドホン、イヤホンは合わせて5台くらい所持していて、必要かと聞かれたら余裕で必要ない状態だ。
それにBluetoothの便利さに慣れきったおれが、有線ヘッドホンを買ったところで使うだろうかという懸念もある。

とはいえ気になる、、と迷っているうちに、なぜかこのヘッドホンは徐々に人気を上げていき、気づいたときには品薄で販売停止となっていた。

ジャックパーセルに続きまたこれだ。
人は因果なもので、買えなくなると以前の100倍欲しくなる。
おれは再販されたら即ポチろうと決意した。

で、ようやくその時がきて無事購入したってわけだ。

先に先輩ユーザーの商品レビューを読んでいて概ね特性は理解していたが、それでも予想以上にクセの強いヘッドホンだと感じたので、おれも正直レビューをしてみよう。

ちなみにおれが普段使っている主なヘッドホンとイヤホンは、
beats studio buds
urBeats3(有線)
オーディオテクニカ ATH-M50x
の3種類だ。

ドクター・ドレーの職人感に憧れがあるミーハー要素だけでbeatsを使っているので、そこまで音質にこだわりがあるわけではない。Beats by Dr. DreDr. Dreの文字がなかったらたぶん買っていない。urBeats3に至ってはほぼweb会議専用イヤホンになっている。

studio buds、urBeats3ともに低音域強めでありつつもわりとバランスのいい日常使い用イヤホンだと思う。
音の広がりは相当に狭いが、これは1〜2万円程度のカナル型イヤホンなら大体がそうだろう。
オーテクのヘッドホンATH-M50xは音楽制作用で、観賞用とは特性が異なるモニターヘッドホンだ。

上記3台に慣れた耳でST-90-05を聴いてどうだったかというレビューを正直ベースで書いていこうじゃないか。

アシダ音響ST-90-05の外観

なぜにきみは人気なんだろうか

アップグレード版のST-90-07を選ばなかった理由

まずレビューの前に、なぜ今回ST-90-07を選ばずにST-90-05を選んだかだ。
ST-90-07はST-90-05の人気を受け開発された同モデルのアップグレード版である。

価格差2000円程度だったのでどちらにしようか迷ったが、商品説明を読むと低域重視のST-90-05と比べて、高域を重視した繊細な聴こえ方にチューニングされているようだ。

で、おれが普段聴く音楽は、「ロックとヒップホップの男性ボーカルのみ」という唐揚げ弁当感あふれる男子メニューなので、ST-90-05の方が特性があっていると判断したのだ。

で、実際ST-90-05を使ってみての感想だが、ポップスやクラシックのリスナーは、迷わずST-90-07を買った方がいい。なんならロックもST-90-07の方が良いと思う。
ST-90-07の音は聴いていないが、はっきりと断言できる。

これはほとんど今日のブログのオチというか結論だが、ここまで読んでページ閉じようかなという方が買って後悔しないように先に書いておきます。

もうね、ST-90-05の音は完全にヒップホップ専用だよ。
ヒョロっとしたゴボウ野郎なルックスだけど、中身はゴリゴリのラッパーですわ。
むしろbeats以上にこっちこそドクター・ドレーの音っすわ。

ドクター・ドレーの写真

いちおう載せておくか。西海岸の音を作った男・Dr.Dre

後で詳しく書くのであれですが、とりあえず「ポップスやクラシックのリスナーは迷わずST-90-07を買う」でよろしくお願いします。

アシダ音響「ST-90-05」レビュー

アシダ音響株式会社(ASHIDAVOX)とは

まず肝心のアシダ音響とはなにかという話である。恥ずかしながらおれは未知だったが、オーディオマニアにとってはおなじみの老舗メーカーのようだ。
なんと創業80年を超え、放送業界を始めミュージシャンやエンジニアの高い要求に応える最高級ヘッドホンを手掛けてきているとのこと。
そのアシダ音響が一般ユーザー向けに国内生産にこだわり開発した高音質ヘッドホンがST-90-05である。

ちなみにメーカーのサイトではこのヘッドホンをこのように説明している。

数多くの最高級ヘッドホン設計のノウハウを活かし開発した、高音質Φ40ドライバユニットを搭載。ハイコンプライアンスかつ軽量で、良好なtanδを有するエンジニアリングプラスチックフィルムを採用したダイヤフラムと、理論値 1 テスラの強力な磁気回路を搭載。

--すごい。

なにがすごいって一応音楽好きを謳うおれでさえこの一文で振り落とす突っ走り方がすごい。
「良好なtanδ」なんて読み方さえわからない。最後の文字が波平っぽいなと思うことしかできない無力感だ。

ただ「なんか凄そうなこと言ってるからこれは凄い」という気持ちにもなっている。マルチ勧誘には気をつけたいと思う。

ST-90-05のデザイン

味も素っ気もない本当に無機質なデザインである。

おれは一目惚れだったが、好き嫌いは分かれるだろう。このくすんだ灰色をチルととる人種か地味ととる人種かで評価は真っ二つだ。
これがあえてレトロっぽさを狙ってたとしたらただただあざといのだが、その懸念をかき消してくれてるのがアシダ音響の名前だ。
メーカーの歴史を知って無骨・質実剛健の信頼性はマックスに達した。

ちなみに届いた時の箱も「The・業務用」そのものな簡素な箱であり、その徹底度に感服した。

アシダ音響のヘッドホンの箱

逆にありな簡素なパッケージ

ST-90-05のつけ心地・重さ

めちゃくちゃ軽い。重さは驚異の110gとなっている。
AirPods Maxが380gくらいなことを考えるとこの軽さのレベルがわかるだろう。

ただしつけ心地は決してよくない。オンイヤー型の極みのようなスタイルで本当に耳に乗せるというか置くといった感じだ。
側圧は強めとレビューがあったが、あまりそれは感じなかった。ヘッドバンキングとかするとスルッとはずれる程度のフィット感だ。

華奢な見た目ではあるが堅牢性は本当にしっかりしていて、ヘッドバンド部分の硬質カバーといい、ぶっとい有線ケーブルといい、さすが「業務用」を売りにしてきたメーカーといえるタフで丈夫な作りである。

また密閉型のため音漏れがしづらく、外出時にも利用できる。いちおう装着したまま知人に音漏れ確認したら「大丈夫」と答えていたから大丈夫だろう。面倒くさそうにスマホを見ながら返事されたけどきっと大丈夫だろう。

ST-90-05の外観

本当に薄くて軽いデザイン

そして肝心の音は、、モコッ!

たぶん初めて聴いた瞬間に「ん?」となる。おれはなった。モコッとしてた。

そう、おれがいつも使っているイヤホンと比べて、良くも悪くもモコッとした音というのが第一印象だ。
薄くて軽い外見からは想像がつかないほどのベース音が響き、とにかく迫力は凄まじい。しかしエレキギター等のきらびやかさは一気に消えている。そんな状態だ。

で、すごく不思議だったのは、音の区分けができないほどカオス化する音域と、めちゃくちゃ明瞭に聞こえる音域混在しているところである。

なんだろ、男性ボーカルの芯がある800Hzくらい周辺でグラデーションになってる感じだろうか。この音域からやや下がったあたりがクッキリゾーン、上にいくとモヤッとゾーンみたいなイメージに感じられた。
クッキリゾーンの明瞭度はなかなかで、それこそビーツのイヤホンだと聴こえなかった音だったりが聴こえるレベルだ。対してモヤッとゾーンは本来ジャキジャキ響いていたギターがビャギビャギとなる感じだ。そう聞こえたんだからしょうがない。

ちなみに空間の広がりは、密閉型のためイヤホンと比べてやや広いといった程度だ。

部屋で例えるなら、天井が低めで広さは普通で高性能な床暖房付き、蛍光灯は明るめで視界は良好、しかし目線より上のあたりに霊的なモヤがあって視界をふさぐといった感じだろうか。
例えた意味があるのだろうか。

ST-90-05はヒップホップ専用ヘッドホンといってもいい

このヘッドホンに一番向いているジャンルはヒップホップだ。

低音の強さは想像以上なのでロックを聞いても決して悪くないのだが、エレキギターのキラッとした響きなどどうしても犠牲になるところが出てくる。

唯一犠牲を払うことなくノンストレスで聴けたジャンルがヒップホップだった。
音数&上物は少なければ少ないほど映える。
とにかくバスドラとベースの音がまろやかに濃厚に心地よく響き、非常に温かみがあり気持ちよくリスニングに浸ることができた。

思うに、このヘッドホンの高評価の最大の要因は、華奢な外見とゴリゴリ重低音のギャップから生まれているのではないだろうか。これは事前情報がなかったら絶対驚く。おおっ!てなる。
のび太の皮をかぶったドクター・ドレーなんだもの。驚くよそりゃ。

ちなみに、おれはそもそも現象自体に半信半疑だが、エージング(数百時間のリスニングを経てヘッドホン本来の性能が発揮される現象)で音がクリアになるというレビューも読んだので、もしかしたら今後印象が変わる可能性はある。

結論、ST-90-05は価格と作りを加味すると素晴らしいヘッドホンである

なんだかちょっと厳しめになってしまった感じだけど、とはいえなんといっても6000円台だ。
本来音がどうこうというべき価格帯ではない。それを考えるとめちゃくちゃ満足度は高いと思う。
あとケーブルも含めてがちがちの堅牢性は感動を覚えるレベルで、本当にしっかりと作られている。軽く携帯性抜群ってところも重要ポイントである。

このしっぶーいくすんだグレーの外観にピンときたら(ブラックもある)、買っておいて損はない。そう無責任に宣言しますわ。
今日はもう寝ますわ。
ではでは、おやすみなさい。