この丸メガネはミュージシャンなの?

音楽ブログを早々に諦め、ゆるめのサブカルブログへ男は舵をきった

シンセ愛に狂わせたキュートな小悪魔、KORG『monotron』

 

korg-monotron


 

正直いって、以前はそんなに好きじゃなかった。
「僕には生理的に合いません」
そんな言葉を吐き捨て、冷たい態度をとったこともあった。
だけど触れているうちに、そうツマミをクリクリしているうちに、いつしか僕はきみに夢中になっていた。

ごめん。
そして、そばにいてくれてありがとう。
シンセサイザー


とまあ、そんな紆余曲折なドラマを経て、今はシンセサイザー(特にガジェット系)に首ったけで、ヒマさえあればサウンドハウスamazon往復運動を操られたように繰り返している。

シンセが好き。とはっきりと言うようになったのは、いってもほんとにここ1〜2年の話で、シンセ界の深い沼にどっぷり沈み込んでいる先輩方からしたら、まだおれなんてビート板と浮き輪が放せないまま、浅瀬で水と戯れる幼稚園児の水かけっこレベルである。

正直、まだその深い沼だか海だかにザブンと全身からいく勇気はなかなか出ない。

「あの沼には魔物がいる。凄まじい勢いで時間と財産を吸い取られ、後に残るのは巨大なラックと"無"だ」
そうおれに忠告してくれた先人もいる。

ただおれは徐々に沼へと近づいているようだ。
最近では、シンセの動画だけ観て終える休日もある。

ページの出だしで謎のポエムを披露したように、シンセへの愛自体は日に日に強まっていて、おれの頭ではシンセ愛のLFOのツマミがぐりぐり回っている。

シンセのプレイ(特にモジュラー系)におれが強く感じるのは、虚無的な生の哲学だ。

ドローンやノイズの作り出す、メッセージはおろかメロディーもなくその場限りで消える音世界は、おれが日常的に求められている「生産性」というヘドが出る言葉の意味とは対極に位置しているように思え、そしてそこに没頭する人間の顔に、おれは人間の偉大なる智恵を垣間見るのだ。


なんか在宅勤務のし過ぎで頭がおかしくなってきたので、シンセの話はいったん置いといて、意味がわかるとエロくない余談でもブレイク代りにしましょうか。



私の友人でサラリーマン兼哲学者のATSUSHIという男がいるのですが、アバンチュールな空気ただよう夏の電車で、こんな現場に遭遇したそうです。

電車で座っていたら、目の前に立ってるいたってフツーの幼さの残る女子高生二人組がこんな話をしてたんですって。

『――ヒロキ先輩のほうが大きくない??』
「えー、ぜったいスズキ先輩のほうが大きいよー」
『スズキ先輩大きいけど、なんか先のほうがくいってちょっと上がってるじゃん。あれあんま好きじゃない』
「たしかに笑」
『ヒロキ先輩のほうが全然かっこいいし形いいし大きいよ』
「でもたしかにヒロキ先輩のほうが形がいいよね」
『ふたり並べて比べてみたいね』
「笑」

一体なんの話をしているんだろう。 いや、まさか。しかしどう考えても……。
ATSUSHIのピュアな男心は、まだ年端もいかない若者の、軽薄で猥雑に乱れた性事情に、けしからんという怒りを覚えたそうです。

しかし怒りを覚えながらも不思議と抗いがたい引力があり、しかも怒りかなんだかわからないが興奮もしてきてしまい、ATSUSHIは目をつぶり無関心を装いながら、一言一句聞き逃すまいと聴覚に集中したそうです。

で、最後までぜーんぶしっかりと聞き終えたら、これ全部「目」の話だったそうです。

ATSUSHIは、先ほどとは違う種類の強い怒りを覚えたそうです。

「いやー僕はがっかりしました」
ATSUSHIからの臨場感あふれるLINEの終わりにはそう書かれていました。

なぜかその後「もうすぐ秋ですね。」
との謎のメッセージが続いており、夏の終わりの風に吹かれる男の背中の哀愁を感じました。

以上すべてが余談でした。



で、おれが書きたかったことはこんなどうでもいい茶番劇ではなく、シンセサイザーのことだ。

そう、もともとパンク畑から(近くにパンク野郎しかいなかった)音楽に入っていったおれは、当然のごとくエレキギターこそ漢(おとこ)の楽器という、強烈な暗示にかけられていた。

シンセサイザーと普通のキーボードの区別もついていない、というかイコールだと思っていたおれは、シンセ弾きはメンバーに女性ボーカルのいるバンドで細身の醤油顔の男がペラペラなシャツを着てピコピコ弾く軟弱な鍵盤楽器だと思い込んでいた。

汗もかかず、声も枯らさず、時折ボーカルの女子と目配せして微笑んで…
ロックなめんなよ!
そう思っていた。

田舎のヤンキーが先輩のヤン車に憧れるような感じでエレキギターを崇拝しているわけだから、あのペラペラピコ太郎なキーボードを認めるわけにはいかない。
認めたら漢のポリシーへの冒涜となる。
そんな強い意思をもって拒絶していた。

が、しかし。
ある日おれは知人とスタジオに入ったときに出会ってしまったのだ。
KORGの『monotron DUO』というベリーキュートなちっちゃな小悪魔に。

ーーってとこで眠くなってきたので、また今度続き書きます。

最後に新曲をリリースしたので、ヒマな時聴いてみてください。
いつもどんよりさせるおれには珍しくポップでキャッチーな楽しい曲です。
漢のポリシーはどこにいったっていうくらいピコピコしてます。

ではおやすみなさいまし。

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