今週のお題「読みたい本」
月日の経過が早い。もう5月だ。いやちがう6月だ。まじか6月か。
メンタルも行動も右往左往してハードな1ヶ月だった。久々に体調も崩した。なぜか小児の流行病・溶連菌にかかった。で、ようやく回復したのがついさっきだ。
この1ヶ月の空白を埋めるために、私はキーボードに向かい出した。それが今だ。
本当にやるべきは他にある。でも私はブログを書き出した。それが今だ。
読みたいのに読み進められない名作文学作品
今週のお題が「読みたい本」ということでとても好物なテーマだ。
いつか読みたいと思っている未所有の本はたくさんある。
ただ今回紹介する作品はすでに手元にあるものだ。
買って読み始めたはいいけど、途中でやむなく挫折をした小説だ。
読書に求めてるのは9割が娯楽要素で、教養的なモチベーションがほぼないから、いざ「これ合わねえな」ってなった時に次ページへいく推進力がおれにはない。
事前にレビュー確認、果てはkindleで数ページを試し読んでから買うタイプなので、シンプルに「はい駄作!」ってことはほぼない。
10代だったらハマってただろうなとか、そういう感じの「現在の自分」と合わないってことでのリタイアが多い。
小説は意外と出会うタイミングが重要なのだ。
まあそんな感じで胸を張って「読みやめます!」と言い切ったものは、健全に脳内から消える。
今回紹介するのは不健全にリタイア(未遂)したものだ。
好きな作品のある作家であり、読書前のファーストインプレッションは「絶対好きに違いない」というくらい鮮烈で、かつ世間で築かれた確固たる名作の地位、しかしなぜか読み進められない。
「これって付き合ってるの? 好きであってるの?」に近いモヤモヤした未読作品である。
ゾッとする春樹の罠「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 村上春樹」
【作品紹介文】
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。
老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。
静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。
「ノルウェイの森」「風の歌を聴け」〜「羊をめぐる冒険」の初期三部作、その他諸々と村上春樹作品を立て続けに読破したおれの快進撃をせき止めた傑作小説だ。
さっきkindleで進捗率を見たらまさかの4%だった。
期間を置きつつ何度か開いた記憶はあるのだが……。
その4%の記憶も怪しい今となっては、タイトルだけ知ってる奴となんら変わらない。
しかしこの本なぜか引力だけはずっと感じるんですよ。明日にでも読み出すんじゃないかってくらい今ならいける感を出してくるんですよ。いやもう明日読みます。はい。
ってところでふと気づきゾッとしたのは、
「よし久々に読もう」→「4%しか進んでいないからもう一回最初から読もう」→「4%で挫折」→記憶消滅
という流れをおれは過去に何度も繰り返しているのではないだろうか……。
Oh ワンダー……ランド。
逆転を信じて「コインロッカー・ベイビーズ 村上龍」
【作品紹介文】
1972年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。
母親を探して九州の孤島から消えたハシを追い、東京へとやって来たキクは、鰐のガリバーと暮らすアネモネに出会う。キクは小笠原の深海に眠るダチュラの力で街を破壊し、絶対の解放を希求する。
毒薬のようで清々しい衝撃の現代文学の傑作。
「限りなく透明に近いブルー」がとてつもなく自分好みでおもしろかった。
和製トレインスポッティングだった。いや作られた順的にはトレインスポッティングが洋風・限りなく透明に近いブルーなのかもしれない。
今の文が完全に蛇足だった。
「限りなく〜」は最高だったものの、この作家が一筋縄ではいかないこと、つまり「限りなく〜」の焼き増し小説は書かないだろうと思い、かなり慎重に村上龍作品の中から選んだつもりだった。
「コインロッカー・ベイビーズ」は古参ファンから新参にわかまでこぞって村上龍の最高傑作と評しているし、現に数ページ読んだ感じでもこれはいけると思ったので購入した。
いやすごい。スピーディーな文章も強雨のようにページに散らばる怒涛の原色的かつ刺激的なイメージも自分好みでとても良い。
しかし、しかしなぜか進まない。
kindleの進捗率は47%。
いつかハマるだろうと確変を信じてとろとろ読み進めたがここらが潮時か。
ここから逆転があるとしたら、見開きで村上龍のヌードが出てきて一度頭が白紙になり、そこからしれっと第二部が始まってくれるしかない。
まだおれの脳に溶連菌が残っているようだ。
いやしかしこれはなんだろうな、アヴァンギャルド・ジャズとかノイズミュージックみたいに、少なくとも書いてる方が楽しいのは間違いない作品なんだよな。
それが無旋律だともう読み手側は堂々と手放せるけど、ほど良く旋律があるから手放せないというか……。
よし逆転信じて残り53%いってみるか。
読む前に敗北「ホワイト・ジャズ ジェイムズ・エルロイ」
【作品紹介文】
痙攣し疾走し脈打つ文体が警察内部の壮絶きわまる暗闘を描き出す。
ゼロ年代日本のクリエイターに絶大な影響を与えた究極の暗黒小説にして警察小説。
おれが10代の頃から大好きな作家の一人・馳星周がバイブルとしている小説。
馳星周の記号を多用したシャープなあの文体のルーツとあって、これは読むしかないと手に取った。
で、巻末に書かれた馳星周の解説コメントがまためちゃくちゃ格好いいのだ。
「わたしの手元には、もう一冊、『ホワイト・ジャズ』の単行本がある。何度も読み返され、くたびれきったものとは対照的に、その単行本は真新しく、わたしの本棚に収まっている。表紙を開くと、そこにはエルロイのサインがある――添え書きとともに。
血をまき散らせ。
これが、エルロイだ。」
こんな心地よい馳節が続くのだ。この解説だけで満足だ。おれの心は中二に返り心地よく痺れる。
で、本編いくか。となって、おれはそこから進んでいない。
これは書籍で買ったのでkindleでないのだが、おれの記憶上、進捗率は0%。
理由は本編前のこのページで、わかる人はわかってくれるだろう。
--全然「主な」人数じゃない!!!
総勢30人超えの「主な登場人物」に新学期の担任気分になってしまい、読書欲をそがれ、おれは馳星周の解説だけを楽しむ本として「ホワイト・ジャズ」を手元に置いている次第です。
馳星周はこう続ける。
エルロイは読者を選ぶ。万人に好まれる小説など、彼の目指すものではない。
なるほど、身に染みましたわ。
では今日はおやすみなさい。